人手不足が深刻なのに失業率は3.6% なぜ解消しないの?
総務省が5月30日に発表した4月の完全失業率(季節調整済み)は3.6%と先月から横ばいとなりました。専門家の中からは日本は完全雇用になっており、これ以上失業率を低下させるのは不可能という声も聞こえてきます。実際、企業は人手不足で悲鳴を上げているのですが、3.6%も失業している人がいるのに、どうしてそんなに人手不足になるのかと疑問を持つ人も多いかもしれません。
経済学的にはこの水準の失業率はかなり低いと見なされます。企業が提示する条件と労働者が望む条件が完全に一致するとは限りません。どんなに景気がよくても、一定数の労働者はうまく仕事を見つけられない可能性があり、失業率がゼロになることはないからです。
むしろ現在の日本では、本当にこんなに失業率が低いのだろうかという疑問の声も出ているくらいなのです。いくらアベノミクスによって景気が盛り返しているとはいえ、長期のデフレが続いた後ですから、日本はまだとても好景気といえる状態ではありません。バブル経済がピークだった時代にも3%近い失業率があったことを考えると、やはり3.6%という数字は低すぎるのかもしれません。
日本には約6600万人の労働人口があります。このうち仕事についている人の数は約6350万人ですから、失業者は約250万人ということになります。しかし、統計上失業者とカウントされるためには、求職活動を継続的に行っている必要があります。職探しを諦めてしまった人は失業者とはみなされず、非労働人口になってしまいます。
15歳以上の人口に対して、実際に働いている人の割合は57%しかありません。ここには老人も含まれますから、勤労世代に限って言えば、おおよそ80%という数字になります。逆にいえば、2割の人が何らかの理由で働いていないわけです。失業率の定義は国によって異なるのですが、日本の定義を米国と同じにすると、数字が大きく上昇すると指摘する専門家もいます。
仕事をしていない人や、職探しを諦めてしまった人は、労働市場に出てきませんから、企業は職探しをしている人の中から人材を採用しなければなりません。厚生労働省が発表している職種別の有効求人倍率は、建設関係では2.6倍、介護を含むサービス業では1.9倍と人手不足が深刻になっています。労働条件が厳しいといわれる業界では、まったく人が集まらないという状況が発生する一方、一般事務職の求人倍率は0.23倍と人材が余っています。全体として雇用のミスマッチが大きいということが分かります。
数字の上では、働いていない人を労働市場に引っ張り出せば、人手不足はすぐに解消するはずです。しかし、現実にはそう簡単にはいきません。政府が海外からの労働者受け入れを拡大する方針を打ち出しているのも、こうした理由からです。
情報提供:(The Capital Tribune Japan)