東京五輪は「ヤクザ・オリンピック」だって?
2014/03/28
ちょっと前、ソチ・オリンピックに出場した代表選手にメダルはかむなとか負けてヘラヘラ笑うなとか、「注文」をつけたことで騒ぎになっていた明治天皇の玄孫(やしゃご)・竹田恒泰さんが、2月28日にテレビの生放送に出演し、芸能人たちに袋叩きにあったらしい。
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個人的には、選手たちが「国を背負っちゃっている」存在であるため、しかるべき振る舞いをしてほしい、という竹田さんの主張は分からんでもない。が、北朝鮮じゃあるまいし個人のスポーツ選手にそこまで「国家」を求めんなよ、という拒否反応を示す人たちの気持ちも分かる。
代表選手が五輪に出られるまでのスポーツエリートに成長できたのは、国のおかげではない。
よく言われることだが、浅田真央ちゃんが一流アスリートになれたのは、寝る間も惜しんでホストクラブで働いて、練習をサポートし続けたお父さんの苦労があるし、なによりも真央ちゃん本人の血のにじむような努力に尽きる。つまり、トップアスリートには、「国家」以外にも背負っているものが山ほどあるというわけだ。
だからなかには、周囲の空気が読めず、「あちゃー」という言動をしてしまう人もいる。そういう残念な感じも含めて、「アマチュアスポーツの祭典」という気もするのだが、生まれながら「国」を意識して育った竹田さんにはピンとこないのだろう。
そしてもうひとつ、彼がここまでかたくなに選手に「国を背負え」と訴える背景には、やはりお父さんの恒和さんがJOC(日本オリンピック委員会)の会長を務めていることも大きい気がする。
●国を背負っちゃっている存在
ご存じの通り、恒和さんは東京オリンピックの招致委員会の理事長を務め、ブエノスアイレスで全世界に向けてこんなことを言ってのけた。
「東京は福島から250キロメートル離れているから、みなさんが想像するような危険性は東京にはない」
五輪のためなら福島はザクッと切り捨てる。日本人としても、「国際人」としてもかなり残念な発言だが、これも恒和さんが「国を背負っちゃっている存在」がゆえにポロっとでたということなのだろう。たぶん。
発言後、恒和さんはバッシングを受けた。そんな親父の背中を見ていたら、「おまえらもしっかり国を背負えよ」と代表選手たちに八つ当たりしたくなってしまった、という気持ちもよく分かる。
だが、竹田さんには申し訳ないが、代表選手の振る舞いにあれやこれやと注文する前に、「こっちの振る舞いはどうなの?」という問題もある。
竹田さんが代表選手に「メダルを噛むな」などの「注文」をつけていた前日、米・大手ニュースメディア「デイリー・ビースト」が「ヤクザ・オリンピック」なる記事を配信した。
父・恒和さんの脇をかためるJOC副会長という要職にある田中英寿・日本大理事長が住吉会・福田晴瞭会長と肩を並べている写真がドーンと掲載され、こういう人物が要職にある「東京オリンピック」では、ヤクザにも「おもてなし」があるんじゃないの、とケチをつけているのだ。
日本のスポーツ紙は、「米メディアが衝撃報道」なんてわざと驚いてみせているが、実は田中理事長のこの手の話題は、新聞・週刊誌記者の間ではかねてよりささやかれていた。日大でも前理事長時代の特別調査委員会で、暴力団との関係を追及されているし、最近もオリンパス報道で知られる雑誌『FACTA』なんかでは、山口百恵の赤いシリーズさながら、田中理事長に対して「黒い交際」「黒い別荘」と1年以上にわたって “黒い”シリーズが連載されている。
●竹田さんは田中理事長に噛みついていない
ちなみに、件の写真は『週刊文春』にも掲載された。記事によれば、田中理事長は大学広報を通して、「(写真が撮られた)16年前のことなど古過ぎて全く覚えていない」と釈明しているとか。
「竹田理論」では、五輪代表選手は「国を背負っちゃっている存在」で、世界に誇れる国際人らしい振る舞いをしなくてはいけない。ならば、そんな彼らをサポートし、同じく国費のサポートがあるJOC役員も同じ役割が求められるはずだ。
米国では「ヤクザ」は資産凍結の対象であり、五輪開催地の東京には暴力団排除条例もある。メダルをかむなとか「楽しかった」とヘラヘラ笑うなとか、どうでもいいことで目くじらをたてるなら、こっちにこそ「注文」をつけたほうがいいのではと思うのだが、今のところ竹田さんが田中理事長に噛みついたなんて話は聞かない。
まさかお父さんのお仲間だからって、こっちはスルーってわけじゃないスよね。
情報提供
[窪田順生,Business Media 誠]
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