FXはインジケーターで勝てるのか?

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ドル100円割れは杞憂、「円安」再浮上へ=池田雄之輔氏

2014/05/08

池田雄之輔 野村証券 チーフ為替ストラテジスト

コラム:ドル100円割れは杞憂、「円安」再浮上へ=池田雄之輔氏

[東京 25日] - 3月後半から4月半ばにかけて、金融市場は不可解な動きを見せた。株式市場は米国のハイテク株を中心に大きく崩れた一方、為替市場ではトルコリラや南アフリカランドなど高金利通貨が大きく値を戻した。

一見すると、リスクオフなのかリスクオンなのか判別がつかず、相場を動かしている共通テーマも一点に絞れるようなものがない。また、ドル円は102円前後で不気味な落ち着きを見せている。このような分かりにくい相場の背景では、ポジション調整の動きが「悪さ」をしている可能性に注意すべきだろう。

<ヘッジファンド勢が放棄した2014年の相場テーマ>

筆者は、春先の「不可解な相場」は、ヘッジファンド勢が「2014年の相場テーマ」をいよいよ諦め、最後のポジションを落としに行った動きによるものと見ている。

振り返れば、昨年12月19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で資産買い入れペースの減速(テーパリング)が打ち出され、「14年の金融市場は米国経済の強さ、それを裏付けとした米連邦準備理事会(FRB)の緩和縮小が主題になる」との見方がコンセンサスとなった。派生した投資戦略としては、「ドル全面高」「債券よりも株式」「新興国よりも先進国」が浸透していった。

しかし、大寒波による年明け後の米国景気指標の悪化、中国景気・金融システムへの不安、ウクライナ情勢の混乱、と誤算が続く中で、ヘッジファンド勢は大苦戦を強いられた。そこに来て4月4日発表の米雇用統計は、強いとも弱いとも、悪天候のせいともそうでないとも、判断を下しにくい極めて中途半端な結果だった。

「5月まで動きようがない」と見たヘッジファンド勢は、残っていたポジションを一掃するかのように巻き戻しを加速させた、という展開である。いわば、相場格言にもなっている「5月に売れ(Sell in May)」が1カ月前倒しされた格好だ。

巻き戻しが為替相場に強く影響した証拠として、テーパリング開始前夜(昨年12月18日)から相場が複雑性を増し始めた時期(今年3月14日)までと、そこからイースター休暇前(4月18日)までの2つの期間で、通貨別の対ドル騰落率を比較すると、逆相関の傾向がはっきりしている。昨年末から強かった通貨ほど売られ、逆に弱かった通貨ほど買い戻されているのだ。

もちろん、この間の相場が「巻き戻し」の一言だけで説明されるわけではない。豪ドル、ブラジルレアル、韓国ウォンの強さが目立つ点は興味深い。これらの通貨には、「中銀の口先介入の弱さ」(豪ドル)、「政権交代への期待」(ブラジルレアル)、「タカ派的中銀総裁への交代」(韓国ウォン)といった固有の要因も解説されている。

しかし、共通の要因として、中国景気に対する悲観論の修正が追い風になっている可能性も濃厚である。3月13日に全国人民代表大会(全人代)が閉幕するとともに、同月後半から中国株(上海総合指数)が大きく持ち直していることと連動している。

<ドル円は上昇見込みやすく、資源国通貨は見極めの局面>

では、このような相場展開を踏まえ、今後の為替市場をどう見るべきか。まず、豪ドルなど資源国通貨に関しては慎重な判断が求められる局面と考える。これら通貨の最近の買い戻しが、投機的ショートの巻き戻しという側面を持っていたことに加え、中国景気についても、不透明感が払しょくされたというには時期尚早であるからだ。

4月16日に発表された1―3月期の中国の国内総生産(GDP)は、市場予想を上回るプラス7.4%(前年同期比)だったが、固定資産投資など個別データはむしろ減速傾向が著しい。4月の製造業指数も、米国の復調で輸出受注が持ち直し傾向にある一方、内需の反転を読み取ることは難しい。当局が本格的な景気対策に動いているわけでもなく、今後の景気指標がしっかりと改善しないようだと、市場は再度悲観に傾く可能性がある。

一方、ドル円については、安定的な上昇(円安)をむしろ見込みやすくなった。1ドル=102円前後では投機的な円ショートの中でも、より短期で動く「軟らかい」ポジションがほぼスクウェア(中立)になっていると見られる。新興国を手掛けるファンド勢の円ポジションも大幅に縮小しているため、ウクライナ情勢の悪化などがグローバルなリスクオフに転じた場合でも、波及的にドル円が売られる危険は小さい。

加えて、国内実需の基調的な円売りフローに立ち向かって円ロングを積み上げるほど、ヘッジファンド勢の「元気」もないと見られる。1ドル=100円割れのリスクは限定的だろう。

もちろん、早期の日銀追加緩和に関する海外投資家の期待値は、だいぶ下がったとはいえ、ゼロではない。4月30日、5月21日の両会合で「政策変更なし」が告げられるたびに一時的な円高に振れる可能性はある。

しかし、本来、黒田総裁が追加緩和に動かない最大の根拠である「シナリオ通りにインフレ率が上がっている」という事実は、日米実質金利差が基調的に拡大している大きな背景でもある。市場のセンチメントが改善するとともに、「デフレ脱却は円安要因」との見方が優勢になる公算が大きい。

さらに、「アベノミクス」全般に対する期待値の低下を踏まえれば、6月以降には成長戦略、公的年金運用改革、日銀追加緩和などで予想を上回る政策アクションが発表される展開も十分あり得る。

<貿易赤字は長期円安トレンドの黒子から主役へ>

日米金利差拡大および「実需の円売り」という円安・ドル高の2大ファンダメンタルズは揺らいでいない。イエレンFRB議長は、市場センチメントに配慮する形でハト派姿勢を強調し始めたが、「15年中に利上げ」という基本路線を変更したわけではあるまい。4月分以降の米国景気指標が強さを取り戻すにつれ、米国金利は再び上昇傾向を鮮明にする公算が大きい。

そして、もう一方の円安ファンダメンタルズである「実需の円売り」は、衰えるどころか加速している。4月21日に発表された3月分貿易統計によれば、日本の貿易赤字額は季節調整後で1兆7100億円まで膨れ上がった。消費税率引き上げ前の駆け込み的な輸入増加があったとはいえ、「円安でも貿易赤字は縮小しない」という、構造問題が一層はっきりしてきた。

ところで、そもそもの問題として、「貿易収支は為替相場に影響しない」といった誤解が根強いが、きちんと説明しておきたい。

「1日当たり100兆円もの取引があるドル円市場において、年間15兆円程度の貿易赤字が影響するはずがない」との議論は、「取引量」と「フロー」を混同して比較している点に重大な問題がある。

たとえば、1秒間に1000回もの売買を行う超高速取引(HFT)やプログラム売買は売り・買いが往復でいちいちカウントされるわけで、取引量に大きく貢献する。しかし、ポジションの偏りは一瞬で解消されるわけだから、長期的な相場のトレンドを形成することはない。

逆に、輸出企業の円買い、輸入企業の円売りは、戻ってこないお金の流れ(フロー)である。分かりやすい例で言えば、電力会社が円売り・ドル買いを行い、火力エネルギーを購入し、それを燃やして発電する。買われたドルが、売り戻されることはないから、円安圧力になる。

確かに、ヘッジファンド勢の動きと違って、貿易など実需の円売りは淡々と続いているので、市場インパクトが見えにくい。しかし、この1年間のドル円相場を振り返っていただきたい。

昨年5月、「アベノミクス相場」の熱狂の中で日経平均株価が1万6000円目前まで迫っていた時、ドル円は103円台だった。そして、現在、ほぼ同じ102円台にとどまっている。この間、世界中のヘッジファンドが円ショートポジションを相当程度縮小、つまり円を買い戻していることは間違いない。規模にして恐らく10―15兆円の円買いだろう。

それにもかかわらずドル円が同じ水準にとどまっているのは、同規模の円売りがあったからにほかならない。それこそが年間15兆円近い貿易赤字なのである。ヘッジファンドの円買い戻しが一巡している中、この先は貿易赤字による円安圧力がいよいよ浮き上がってくるはずである。日銀に対する短期的な「失望」が100―101円台をもたらすのであれば、ドル買い・円売りのチャンスだろう。


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